「マネジメントレター」は当事務所が関与先企業に毎月レター(手紙)としてお送りしているものです。
既知のものも多くありますが、当方がその時々に経営者・社員の皆様にお伝えしたいことをテーマにしています。
*掲載の内容等について、当方が保証、責任を負うものではありませんことをご承知おきください
法人の業務を遂行する上で、お客様を接待することがあります。
例えば、①レストランで食事をごちそうする、②ゴルフをしてお客様のプレー代をもつ、③お客様訪問時に手土産を持って行く、などです。
法人税では、交際費等の額は損金不算入(税務上の経費と認められない)が原則です。
ただし、一定の範囲内で税務上損金算入(税務上の経費と認められる)されます。
資本金が1億円以下の法人の場合(例外あり)は、次のいずれか多い金額が限度です。
(1)接待飲食費の50%相当額 (2)800万円×月数/12 |
(1)は「飲食費」ですので、上記①が該当しますが、②は該当しません。
③は、品物としては「食べ物や飲み物」のこともありますが、「飲食」ではないので該当しません。
(2)はすべての交際費なので、①~③とも該当します。
さて、接待飲食費ですが、喫茶店でコーヒーを飲みながら打合せをしたというような場合は、そもそも「税務上の交際費」に該当しません。
この判定として、飲食代金が1人あたり1万円以下(令和6年3月までは5千円)の場合は交際費から除かれますので、「会議費」等として処理できます。
また、「1万円以下」かどうかの判定ですが、自社の消費税の経理方式により異なります。
自社が「税込経理」の場合は、支出した飲食代金の消費税込みの金額、「税抜処理」の場合は、消費税抜きの金額で判定します。
さらに飲食した店がインボイスを発行しているか否かによって、店に支払った代金の中に含まれる消費税額とされる金額が異なります。
今回の金額基準の改正を機に、社内の規程を見直してみるのも良いでしょう。
2024年4月20日現在
令和6年3月1日から、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行され、広域交付制度がスタートしています。
今までは、相続の手続きの際に本籍地が全国各地にある場合は戸籍証明書を集めるのが大変でしたが、最寄の市区町村の窓口で取得できるなど便利になります。
<広域交付制度>
本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになり、以下のようなことが可能です。
本籍地が遠くにあっても、住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できます |
必要な戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口で請求できます |
*コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は除かれます
*一部事項証明書、個人事項証明書は請求することができません
【請求できる範囲】
[ 本人 配偶者 父母・祖父母など(直系尊属) 子、孫など(直系卑属) ]
【手続き】
戸籍証明書等を請求することができる人(上記参照)が市区町村の戸籍担当窓口に出向き請求する必要があります
*郵送や代理人による請求はできません
*窓口に行く人の本人確認のため、以下の顔写真付きの身分証明書の提示が必要です
[ 運転免許証 マイナンバーカード パスポート など ]
2024年3月15日現在
令和6年度は定額減税が実施される予定です。内容は至ってシンプルですが、実務の処理負担は大きいので、概要を知り早めに準備をしておきましょう。
国税庁のサイトには説明のリーフレット等が掲載されています。
所得税・個人住民税の定額減税
所得税 | 住民税 | |
本人分 (令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下が要件) | 3万円 | 1万円 |
同一生計配偶者又は扶養親族 (居住者に限る) | 1人につき 3万円 | 1人につき 1万円 |
2024年2月20日現在
厚生労働省は、雇用管理の改善に取り組む事業主を支援する3つの認定制度を設けています。
認定を受けることにより、次のようなメリット等が期待できます。
●自社の商品、広告などに認定マークを使用できる
●日本政策金融公庫から低利融資が受けられる
●公共調達で加点評価が得られる
また、給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度において、一定の認定企業には税額控除率が上乗せされるといった税務面でのメリットも可能性があります。(令和6年度税制改正案)
2024年1月16日現在
厚生労働省は、2023年9月27日に「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表しました。
<現 状>
会社員等の配偶者で、扶養されていて本人の社会保険料の負担がない層のうち約4割が就労しています。
その中には、一定以上の収入(106万円または130万円)となった場合に、本人の社会保険料負担の発生や、相手方が勤務する会社の配偶者手当がもらえなくなることによる手取り収入の減少を理由として、就業調整をしている人が一定程度存在します。
いわゆる「106万円・130万円の壁」です。
<当面の対応>
これに対する当面の対応として、本年10月から以下のような施策に取り組むとしています。
(1)106万円の壁への対応
①キャリアアップ助成金のコースを新設する
②社会保険適用促進手当につき、一定額を標準報酬の算定上除外する
(2)130万円の壁への対応
労働時間延長等に伴う一時的な収入変動による被扶養者認定の判断において事業主の証明による迅速な判断を可能にする
(3)配偶者手当への対応
企業の配偶者手当の見直しを促進するため、見直しの手順をフローチャートで示す等分かりやすい資料を作成し、中小企業団体等を通じて周知する。
2023年11月18日現在
国税庁は、居住用の区分所有マンションの相続税評価についての通達を発遣しました。
(令和5年9月28日付)
いわゆる『タワマン節税』が問題視され、令和5年度の税制改正大綱において、「適正化を検討する」とされていたものです。
原則として、令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した居住用の区分所有マンションについて適用されます。
2023年10月13日現在
さてインボイス開始「10.01」が間近となりました。
インボイス登録の申請をしたものの、10月1日になっても登録通知が届かないということもあり得ます。
この場合、「売手」と「買手」それぞれどのように対応すれば良いでしょうか。
『売手の対応』 ・・・[10月1日になっても登録通知が届かない]
【対応1】 インボイスの交付が遅れる旨を先方に伝え、登録番号通知後にインボイスを交付する
【対応2】 当面は請求書等を交付し、登録番号通知後に改めてインボイスを交付する
【対応3】 登録番号通知後にすでに交付した請求書等との関連性を明らかにした上で、インボイスに不足する登録番号を書類やメール等でお知らせする
*小売店など、後日インボイスを相手方に交付することが困難な場合の対応の例
例1 事前にインボイスの交付が遅れる旨をHPや店頭にて相手方にお知らせしたうえで、HP等において次のように掲示する
『弊社の登録番号は{T1234…}となります。令和5年10月1日から令和5年●月●日(通知を受けた日)までの間のレシートをお持ちの方で仕入税額控除を行う方におかれましては、当ページを印刷するなどの方法により、レシートと併せて保存してください』
例2 買手側からの電話等に応じ、登録番号をお知らせし、その記録をレシートと共に保存してもらう
『買手の対応』・・・[登録番号のない請求書等を受け取ったが申告期限までに番号のお知らせがない]
【対応】 事前に先方がインボイス発行事業者の登録を受ける旨が確認できたときは、(登録番号の記載がない)請求書等に記載された金額を基礎として、仕入税額控除を行って差し支えありません
ただし、事後的に交付されたインボイスや登録番号のお知らせを保存する必要があります
2023年9月16日現在
今月号も、またまたインボイスがテーマです。
免税事業者(基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者)が、インボイスの登録はしないこととしたものの、その後、取引先との関係・新規の案件が生じたなど登録をした方が良いという状況になった場合の取扱はどうなるかです。
免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合には以下のような経過措置が設けられています。
適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日(提出日から15日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日) を記載することで、その登録希望日から課税事業者となります。
税務署長による登録が完了した日が登録希望日後となった場合であっても、登録希望日に登録を受けたものとみなされます。
ただし、この経過措置の適用を受ける登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含まない場合は、登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については免税事業者となることはできないことに留意する必要があります。
さて、この経過措置の適用を受ける場合は、登録日から課税事業者になりますが、その課税期間から簡易課税を適用したい場合はどうすれば良いでしょうか?
この場合、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができます。
2023年8月9日現在
先月号は、免税事業者(基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者)が、インボイスの登録をした場合の税額計算の経過措置である『2割特例』でした。
今回は、免税事業者から仕入している場合などの経過措置についてです。
【取扱等】
免税事業者(=インボイスを発行することができません)からの仕入等については、仕入税額控除することができません。
免税事業者からの仕入がほとんどというような場合は、自社の消費税の負担が大きくなるかも知れません。
【経過措置】
免税事業者からの仕入であっても、6年間は一定の事項が記載された帳簿及び請求書等を保存することにより、一定の仕入税額控除をすることができます。
いわば免税事業者への支払の中には、「一定の消費税が含まれている」というような計算ができます。
従って、免税事業者からの仕入等については、この経過措置による自社への影響を考慮しながら条件を検討すると良いでしょう。
2023年7月13日現在
消費税のインボイスの導入が10月に迫ってきました。
免税事業者(基準期間の課税売上高が1千万円以下の事業者)には経過措置として、いわゆる2割特例が設けられています。
【対象】○免税事業者がインボイス発行事業者となる場合
○免税事業者が消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になる場合
【適用可能期間】令和5年10月1日から令和8年9月30日までを含む課税期間
例えば個人の免税事業者が令和5年10月1日からインボイス発行事業者となる場合
【令和5年10月~12月の申告、令和6年の申告、令和7年の申告、令和8年の申告】
【内 容】売上等に係る消費税額から控除する金額を「消費税額×80%」とする
【説 例】・サービス業
・売上700万円(消費税70万円) 経費100万円(消費税10万円)
『原 則』 70万円-10万円=60万円
『簡易課税』 70万円-35万円=35万円(70万円×50%:サービス業のみなし仕入率)
『経過措置』 70万円-56万円=14万円(70万円×80%:経過措置の控除率)
つまり、この経過措置は、売上(税抜き)100万円当たり2万円の「納税」ということになります。
【手続き】事前の届出は不要で、申告書に適用を受ける旨を付記すれば足ります。
また、継続して適用しなければならないという制限はありませんので、申告の際に柔軟に適用できます。
*基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間など、この経過措置が適用できない課税期間があります
*もともと課税事業者である事業者がインボイス発行事業者になった場合でも、その翌課税期間以後の課税期間について、基準期間の課税売上高が1千万円以下の場合は、原則として経過措置を適用できます。
2023年6月21日現在
国税が納付されない場合、差押え・換価・配当といった滞納処分が行われます。
ただし、一定の理由がある場合は税務署に申請することにより、換価の猶予が認められる場合があります。
申請による換価の猶予の要件等は以下の通りです。(国税庁HPより)
【換価の猶予の要件】
イ 納付すべき国税を一時に納付することにより、その事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
ロ 滞納者が納税について誠実な意思を有すると認められること
ハ 滞納者から納付すべき国税の納期限から6月以内に換価の猶予の申請書が提出されていること
ニ 納付すべき国税について納税の猶予の適用を受けている場合でないこと
ホ 原則として、換価の猶予の申請に係る国税以外の国税の滞納がないこと
ヘ 原則として、換価の猶予の申請に係る国税の額に相当する担保の提供があること
【上記イ:国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合】
次のいずれかに該当する場合をいいます
• イ 事業に不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行った後においてもなお、国税を一時に納付することにより、事業を休止し、又は廃止させるなど、その滞納者の事業の継続を困難にするおそれがある場合
• ロ 国税を一時に納付することにより、滞納者の必要最低限の生活費程度の収入が確保できなくなる場合
2023年5月22日現在
所得税では個人の納税義務者を居住者と非居住者に区分しています。
居住者はさらに、非永住者と非永住者以外に区分されます。
この区分により課税される所得の範囲が異なります。
【居住者】
国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人
【非永住者】
居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が五年以下である個人
【非居住者】
居住者以外の個人
ここでいう住所とは、その人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定します。
国の内外にわたって居住地が異動する人の住所が国内にあるかどうかの判定に当たっては、例えば、国内に居住することとなった個人の場合、次のいずれかに該当するときは、国内に住所を有すると推定するとされています。
○国内において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
○日本の国籍を有し、かつ、その人が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有することその他国内におけるその人の職業及び資産の有無等の状況に照らし、国内において継続して一年以上居住するものと推測するに足りる事実があること
2023年4月6日現在
金融機関の融資に係る経営者保証の諸課題の解消のため、経営者保証ガイドラインの活用等の取組が進められてきましたが、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を更に加速させるため、経済産業省・金融庁・財務省による連携の下、「経営者保証改革プログラム」を策定・実行していく旨が、令和4年12月23日に公表されています。
経営者保証改革プログラムは、以下の4分野に重点的に取り組むこととされています。
1)スタートアップ・創業
2)民間融資
3)信用保証付融資
4)中小企業のガバナンス
2)の民間金融機関による融資については、監督指針を改正し、『保証を徴求する際の手続きを厳格化することで、安易な個人保証に依存した融資を抑制し、事業者・保証人の納得感を向上させる』とされています。
金融機関が個人保証を徴求する手続きに対する監督強化の主な施策としては、以下のようなものが挙げられています。
① 金融機関が経営者等と個人保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等に関し、事業者・保証人に対して個別具体的に以下の説明をすることを求めるとともに、その結果等を記録することを求める。(2022年4月より)
・どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか
・どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか
② ①の結果等を記録した件数を金融庁に報告することを求める。(23年9月期 実績報告分より)
監督指針は金融機関に対するものですが、企業の側も経営者保証がなくても融資を受けられる体制を構築する姿勢が必要です。
2023年3月11日現在
最近話題のN分N乗方式について試算をしてみました。
給与所得者について、ケース1~3が夫婦の給与収入合計額が1,200万円、ケース4~5が800万円の場合です。
下表の範囲では、「高収入」で、片働きなど夫婦の「収入の差」があるほどこの方式による税軽減効果が大きいことが分かります。
ただし、試算の前提条件をどのようにするかによって、まったく効果が異なりますので、注意が必要です。
(本試算も記載していませんが、いろいろ条件を設定した結果です)
年代 | 給与1,200万円片働き | 給与1,200万円共働き | 給与1,200万円共働き | 給与800万円片働き | 給与800万円共働き | ||||||||||
ケース1 | ケース2 | ケース3 | ケース4 | ケース5 | |||||||||||
世帯課税所得/税差額 | 7,890 | -682 | 6,220 | -229 | 6,080 | -98 | 4,500 | -248 | 3,600 | -55 | |||||
所得税の額 | 1,179 | 496.5 | 559 | 329.4 | 413 | 315.3 | 473 | 225.0 | 235 | 180.0 | |||||
対象/子の数/N | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 3 |
Aさん | Bさん | N分N乗 | Aさん | Bさん | N分N乗 | Aさん | Bさん | N分N乗 | Aさん | Bさん | N分N乗 | Aさん | Bさん | N分N乗 | |
給与収入 | 12,000 | 0 | 8,000 | 4,000 | 6,000 | 6,000 | 8,000 | 0 | 6,000 | 2,000 | |||||
課税所得 | 7,890 | 0 | 2,630 | 4,500 | 1,720 | 2,073 | 3,040 | 3,040 | 2,026 | 4,500 | 0 | 1,500 | 3,040 | 560 | 1,200 |
限界税率 | 23% | 5% | 10% | 20% | 5% | 10% | 10% | 10% | 10% | 20% | 5% | 5% | 10% | 5% | 5% |
所得税 | 1,178.7 | 0.0 | 165.5 | 472.5 | 86.0 | 109.8 | 206.5 | 206.5 | 105.1 | 472.5 | 0.0 | 75.0 | 206.5 | 28.0 | 60.0 |
子1人に係る 係数 |
0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 |
2023年2月16日現在